訪日外国人旅行者数が順調な伸びを見せている中、インバウンド市場では「モノ」より「コト」へと消費動向がシフトしています。これは宿泊業界にも見られる傾向であり、今、異文化交流を体験できる旅館やホテルが多くの外国人客の関心を集めているのです。
国内外の客同士の交流を生む、旅館の特性
日本国内で古くから宿泊観光施設として機能してきた旅館は、近年海外からの人気が高まっています。その理由は、リアルな「異文化交流」ができるからです。
例えば、長野県のある旅館で見られた光景です。旅館では夕食にしゃぶしゃぶや蕎麦などの日本料理が出されることが多くありますが、外国人旅行者にとっては初めての体験であることもしばしばです。食べ方がわからない、何を使えばいいのかわからないなど、そのままでは食事ができません。そこで旅館の従業員が、隣に座っている日本人客に「食べ方を教えてあげてください」と声をかけるのです。
日本人客は戸惑いながら身振り手振りで食べ方を教え、外国人客は日本語ができないなりに理解しようとします。ここに、両者のコミュニケーションが生まれるというわけです。このような光景はホテルのレストランではなかなか起こりにくく、旅館ならではの体験だといえます。
個人旅行者は珍しい体験を求めている
訪日外国人客全体に占める個人旅行者の割合は、年々増えています。個人旅行者の多くは訪日回数が2回目以上であり、前回の旅行よりさらにディープな日本体験を求めています。フットワークが軽い個人旅行者を呼び込むためには、そこでしか体験できない珍しい何かが必要です。
それは例えば前述の旅館での異文化交流であり、古民家への宿泊や農作業体験といったものも挙げられます。私たち日本人にとっては原体験ともいえる素朴な体験ですが、訪日外国人旅行者にとっては斬新で面白く感じられるものなのです。
また、こういった体験の提供は、旅館やホテルのオプションサービスとして組み込むことも可能です。着物の着付け体験を行ったり、地域のお年寄りを招いて語り部体験を行ったり、その地域の特色を活かした体験型アクティビティを宿泊プランに付け加えるのです。
泊まるだけでなく楽しんでもらうというスタイルが、今後の訪日外国人客のニーズに対応しやすくなるのです。