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本書は、インバウンドビジネスが注目を集める中、インバウンド市場における小売店の存在感に注目しています。
著者は、多くの外国人観光客が日本での買い物を楽しんでいることに目をつけ、今現在インバウンドに関わっている小売店はもちろん、これから参入していく小売店にとっての成長戦略・業績アップ術を紹介しています。
今後、企業においても個人においても、大きく影響すると考えられる外国人観光客たちの動き。彼らの形成する市場に乗り遅れないためにも、本書はぜひ一読しておきたい一冊となっています。
インバウンド市場を理解する
本書では、マーケティングの視点を活かして、インバウンドビジネスについて読み解いていきます。今後大きな成長が見込まれ市場だからこそ、正しい知識と長期的な展望が求められるインバウンド市場。そこには企業や小売店のさらなる可能性が秘められているのです。
著者は伊勢丹の営業本部戦略立案担当として、営業戦略から新規事業開発まで幅広く担当した経歴の持ち主。現在は観光立国推進協議会委員や、日本百貨店協会外国人観光客誘致委員会アドバイザーを務めており、まさに現場のリアルな情報を活かして書かれたのが本書なのです。
本書では、外国人観光客を「訪日ゲスト」、インバウンドビジネスに携わる事業者を「おもてなし事業者」と呼んでいます。ただビジネスという括りで見るのではなく、日本にやって来る観光客たちに感謝と歓迎の気持ちを込めて考えているというのは、百貨店勤務の長い著者ならでは。こういった見えないおもてなしの気持ちが、実はインバウンドビジネスにおいて重要なのではないでしょうか。
グローバルビジネスのプロによる実践書
本書で特筆すべきところは、大手百貨店の営業本部で培われた論理的で計画的なビジネス展望が、インバウンドの現場に見事に落とし込まれているところです。
本書の第1章~第3章では入門編と銘打って、日本のインバウンドの現状や課題点、これから取り組む人へのアドバイスを中心に構成されており、インバウンドビジネスの初心者にとってビジネスの土台を築くのに役立ちます。
第4章~第8章は実践編となり、マーケティング・商品施策・販売施策・プロモーションの観点からインバウンドビジネスの戦略・立案を展開していきます。「あなたの独自性は何か?」「訪日ゲストの行動に着目」など、著者ならではの視点が光る内容となっています。
特に、第7章で主張されている「オールジャパンで取り組むプロモーション」という考え方は、今後の日本のインバウンド市場を考える上で非常に有効なのではないでしょうか。
もはや多くの市場が頭打ちになっている感のある日本では、数少ない成長市場であるインバウンド市場をどう育てていくかは重要課題です。そこで、個々の利益だけを追求するのではなく「街で、エリアで、オールジャパンで」訪日ゲストを呼び込むことが、実は結果的に個々の利益につながる、というのが著者の考え方です。
今を生き残っていくためだけでなく、観光立国を果たした後の日本の市場を生き残っていくために、本書は強い味方となってくれるのではないでしょうか。より広い視野で、長い展望でインバウンドビジネスを成功させていきたいと考える人に、本書は必読の書となっています。確実に売上を上げたい人・企業は、ぜひ本書をチェックしてみてはいかがでしょうか。