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大型バスで押し寄せ、大きな声でしゃべりながら、高額商品を買っていく、中国セレブたちの本音を紹介。
中国人観光客による「爆買い」の大きなインパクトもあり、日本では彼らのことを「何かとお騒がせな存在」といったイメージで見てしまうことが少なくありません。しかし、日本を訪れる中国人観光客の数は年々増加しており、彼らが日本で消費するお金は日本のインバウンド市場において大きな割合を占めています。
日本の観光業やサービス業にとって、中国人観光客は非常に重要な顧客となり得ます。けれど一方で、トラブルやクレームの元になりやすいのも中国人観光客だといえます。中国人観光客とそれを受け入れる日本人の間には、お互いに対する理解不足がある、というのが本書の指摘するところです。
本書では、両者の隔たりについて学び、軋轢を解決するための一つの策として、「中国人観光客の本音」にスポットを当てています。日本に旅行にやって来る中国人たちの求めていること、不満に思っていることを知りたい人はぜひ、本書を手に取ってみてください。
中国人観光客のリアルな感覚を疑似体験できる!
本書は、日本に旅行にやってきた中国人観光客の視点を中心にして書かれています。日本でツアーガイドとして働く人や旅行会社勤務の男性、ツアー参加者として日本を訪れた中国人女性など、さまざまな立場・階層で日本を旅する中国人の人々に、本音をリサーチしてまとめられているのです。
本書では、旅行中に起きるさまざまなシーンごとに、中国人観光客の本音と中国での実情、中国人観光客の反応を紹介しています。その上で具体的な傾向と対策が提案されているので、「なぜ中国人観光客はこういう行動を取るのか」「だからどうしたらいいのか」という根本的な部分を理解するのに役立ちます。
例えば、よく言われるのが「中国人ツアー客は時間を守らない」ということですが、本書を読むと非常に納得がいきます。本書の第1章、それも1ページ目からこのテーマについて書かれているのですが、少し紹介すると「中国人が時間を守らないのは、時間にルーズな国民性が根底にあるから」といった実情が見えてくるのです。
また、日本人のように「他人に迷惑をかけてはいけない」という感覚が中国人にはないため、日本人からすると身勝手で自由奔放な行動を取っているように見えてしまうというわけなのです。
それではどうしたらいいか、という解決策についても、もちろん本書では触れています。本書を読み進めるうちに、日本人の当たり前と中国人の当たり前がこんなにも違っているのかと、非常に驚くことになるでしょう。
異文化体験も楽しめる読み物としてもおすすめ
本書は大きく分けて2つの章から構成されています。第1章は記述の通り、旅行中のさまざまなシーンを想定して書かれており、続く第2章では中国人の文化的な側面にスポットを当てています。
著者によると、中国の人々、特に田舎の方の人ほど大きな声でにぎやかに話す傾向があるそうです。「中国人はけんかしているように話す」といわれることがあるように、公共の場ではなるべく静かな声で話すことを良しとする日本人からすると、中国人観光客同士が勢い良く大声で話すのを見聞きすると、不快に感じる人も少なくありません。しかし本書を読むと、日本が「空気を読んで察する文化」とするなら、中国は「声を出して主張する文化」ということになるのだそうです。
この他にも、日常生活でのマナーやモラル、お金に関する事情など、中国人観光客に関する細かな情報が丁寧に解説されている本書。特権階級の扱い方や、「バカという言葉は日中戦争を連想させるから絶対にNG」といったことまで、知らないとトラブルになりやすい対応のポイントが網羅されています。
知っているようで知らない中国の人々の内面を、本書を通じて楽しく親しみを持って学ぶことができます。日本に居ながらにして中国を旅行しているかのような感覚を楽しめるのも、本書の魅力の一つです。異文化に触れたいとき、本書を開くことで大きな刺激を受けられることは間違いありません。そして本書を通じて、中国人観光客のイメージは今までよりも身近で愛すべき存在として感じることがなるのではないかと思います。
今後も、多くの中国人観光客が日本にやってきてくれることが予想されており、日本は彼らが快適に楽しく日本旅行を満喫できるよう努力する必要があります。互いの違いを理解し、互いに尊重しあえるようになれば、観光だけでなく両国の関係もより良いものになるはず。本書はそのきっかけになり得る良書となっています。
中国に興味がある人もない人も、ぜひ本書を手に取ってみてください。中国という国のユニークさと中国人観光客たちの本音に触れることができ、日本人として反省したり笑えたりと非常に楽しめる一冊となっています。