日本にやってくるのは、アメリカや中国、韓国といった国の人たちだけではありません。近年はさまざまな国からの観光客が日本を訪れます。日本にしてみれば、より多くの国と地域からお客様がやってくるのは嬉しいこと。
しかし、グローバル化の進む社会では、より多くの国と地域に対する受け入れ態勢を整えていく必要があります。
少数派の国と地域に対する受け入れ準備
日本人にとってはなかなかななじみが薄いのですが、インドやマレーシアといった国からの観光客数も増加傾向にあります。和食の世界的ブームや、日本が海外へ観光立国をアピールしているおかげで、これまでは日本にやって来る機会の少なかった人々も日本に関心を持ち始めているのです。
そうなると、もちろん受け入れのための準備が必要です。特に宗教に関する配慮が必要となります。例えば、キリスト教に次いで世界第2位の信者数を持つイスラム教は、戒律が厳しく、生活面から食事面などさまざまなシーンでの配慮が必要です。
ハラル対応の難しさ
「ハラル」というのはイスラム教の教えで許されている健全な商品、サービスや活動全般のことで、イスラム教徒はハラルな食品以外食べてはいけないとされています。
最も有名なのが豚肉で、ハラルでは豚肉は禁忌とされ食べてはいけないものの一つ。肉だけでなく、豚肉由来の成分を食べることも禁じられているため、ゼラチンやラード、ショートニングを使った食品も食べることができません。
イスラム教徒の人たちにとって、知らずに戒律を破ってしまうことは絶対に避けるべきこと。日本にやってきた際も口にするものには非常に気を使うのです。
ベジタリアン対応の仕方
イスラム教のように食事に関する戒律が厳しく定められている宗教は少なくありません。ヒンドゥー教や仏教の国々では肉食が禁じられ、信者の多くは菜食主義者です。また、宗教とは別に主義として肉を食べない人もいて、中には卵や乳製品も摂らないビーガンと呼ばれる人たちも増えてきています。
彼らの食事では、肉類はもちろん、動物性タンパク質のどんなものを使用しているかを明確にすることが求められます。ハラル専用の食品や、食材のルーツ・調理過程がはっきりしているものを使うよう気をつけなくてはいけないのです。
難しいのは、ハラルや菜食主義の考え方が国や地域、個人レベルでさまざまに異なるということ。特にハラルの基準は宗派によっても異なり、完璧な対応をすることは非常に困難です。もしハラル対応を求められた場合は、その基準や使用して良い物・いけない物について個人ごとにしっかり確認しておくと安心です。
イスラム教徒である「ムスリム」は、今後世界中でさらにその数が増えていくことが予想されています。2030年には世界の人口の3分の1がムスリムになるともいわれており、観光立国を目指す日本としては、ムスリムの人が快適に過ごせる環境作りが求められていくのではないでしょうか?
近年、ムスリムの多い東南アジアから日本への観光客数は増加しており、彼らの心を掴むことが、大きな市場を獲得することにもつながります。ハラルや毎日の礼拝など、独特の戒律を持つイスラム教。
正しい知識と受け入れ態勢を整えておけば、いざというときもお互いに安心しておもてなしをすることができるのではないでしょうか?