2016年は年明け早々から世界同時株安が続き、日本でも一時株価が不安定になったことは記憶に新しいかと思います。中国経済の先行きが徐々に不透明になりつつある中、日本が特に気にすべきなのは、インバウンド市場における中国人観光客の今後ではないでしょうか。
大きな話題となった「爆買い」も、すでに一段落したと見られています。2015年の秋以降、上海株式市場の急落や人民元の切り下げといった出来事により、中国経済の勢いが翳りつつあるからです。
一説には、中国人観光客数の大幅な減少もある、と見られていたインバウンド市場ですが、今のところ急激な変動は見えていません。
日本のインバウンド市場を支えているといっても過言ではない中国人観光客たちの、今後の変化について考えてみたいと思います。
訪日中国人観光客はアジアを目指す!
中国人は、訪日外国人観光客の中で、最も大きなウエイトを占める消費者です。割合で言えば、日本を訪れる外国人観光客の約40%が中国人であり、2014年と比べると2倍以上もその数が増加しています。
しかし2015年の夏ごろから中国の株価の下落が始まり、その影響を受けて中国での海外旅行需要も縮小傾向にあります。それまで右肩上がりに成長していた中国のアウトバウンド市場は減速となり、航空券の値下げが次々と行われるという事態にもなっています。
ただしこれは、欧州方面への海外旅行限定の事象であり、日本をはじめとするアジア方面への旅行者数は引き続き増加傾向にあります。
この事実からわかることは、多くの中国人旅行者が「遠いヨーロッパよりも、近いアジア」を旅行先に選んでいるということです。
株安や経済不安を抱える中国において、まだまだ海外旅行のニーズは高い状態にあります。特に日本や韓国、台湾への旅行者は今後も増えていくと予想されます。
彼らは買い物や観光を楽しみに、これからも続々と日本を訪れると考えられるのです。
なぜ日本での「爆買い」が増えたのか?
中国人観光客が日本を訪れる理由は、「近い」ということだけではありません。買い物を目的にやって来る人が多いのです。
その理由は、中国で「高くても品質が確かで安全なもの」へのニーズが非常に高まっているから。
中国の人々の間には、国内で生産・製造されたものへの不信感が根強く、特に富裕層においては中国産の品物は品質が不安視されているようです。オムツやミルクといったベビー用品、毎日の食事で使われる生鮮食品、直接肌につける化粧品などといった品物は、日本製品の人気が高い代表選手です。
中国では日本製品への信頼感が高く、日本製というだけで高い人気があります。
中国国内でも日本からの輸入品を買うことができますが、中国で売られている輸入品の小売価格は少しずつ上昇しており、人民元の切り下げによりさらに価格が上昇しているといわれています。
これを受けて、多くの中国人が考えたのが、「直接日本で買ったほうが安い」ということです。実際に手に取り、自分の目で確かめながら品質の確かな製品を買うことができるため、日本への買い物旅行は人気があるのです。
今後は品物の購入だけでなく、自然や文化に触れる体験旅行もニーズが高まっていくと予想されており、「爆買い」自体は落ち着きを見せてきてはいますが、中国人観光客数は引き続き増加していくことが見込まれています。