住みたい街として長年人気を誇っていた街・吉祥寺。渋谷・新宿といった都心の人気スポットからほど近く、それでいて井の頭公園をはじめとする多くの公園を有し、緑が多い街でもあります。
住宅地としての人気はあるものの、街の規模や都心からの距離ゆえ、あまり観光地としての存在感はなかった吉祥寺において、最近異変が起きています。それは外国人ツアー客の増加です。
外国人観光客はなぜ吉祥寺にやって来るのか
吉祥寺という街は、駅の南北にいくつかのショッピングスポットがあるものの、観光する場所は非常に限られている街です。自然を楽しむなら井の頭公園や動物園、食を楽しむなら駅前商店街、アート面ではジブリ美術館という人気スポットもあります。しかし、駅近辺にコンパクトに主要スポットが固まっているため、ほんの数時間で全てを回りきることも十分可能です。
そんなコンパクトな街に、なぜ多くの外国人観光客がやって来るのでしょう?一つには、ここでしか見られないジブリ美術館という存在が大きく影響しているといえます。世界的にも人気の高いスタジオジブリのアニメーションは、吉祥寺と大いに関係があります。もともとスタジオジブリが吉祥寺に居を構えていたため、ジブリ作品や宮崎駿監督にとって、吉祥寺は思い出深い街なのです。
しかし、ジブリ美術館のためだけに多くの外国人客が吉祥寺を訪れるかといえば疑問が残ります。そこで浮き彫りになるのが、主要観光地からのアクセスの良さという魅力です。吉祥寺から電車1本で行くことができる渋谷・新宿は訪日外国人観光客が必ずといっていいほど立ち寄る定番観光地です。
しかし、連日多くの外国人客が渋谷・新宿を訪れるため、観光スポットや宿泊施設は非常に混み合います。このため、アクセスしやすい周辺の観光スポットへ流れる客が増えていると考えられます。また、吉祥寺駅前からは羽田・成田の両空港へ行き来する高速バスも運行しており、入国・出国の際に足を延ばしやすいエリアでもあるのです。
ほどよく観光地で、ほどよく交通の便も良い。これが、多くの外国人観光客を呼び寄せる吉祥寺の魅力だといえそうです。
吉祥寺をロールモデルとした、集客のポイント
吉祥寺は外国人観光客を意図的に呼び込んだというより、結果的に流れてきた外国人観光客によるインバウンド市場の恩恵を受けていると考えられます。その証拠に、街中ではこの1年ほどで外国語表記の看板やメニューが急増していますし、大手家電量販店やデパートなどがこぞって外国語対応を進めています。
主要都市以外のエリアでも、立地と交通アクセスの良さにより、意図せずしてインバウンド市場を獲得する場合があります。その一つが、まさに吉祥寺だと言えるのではないでしょうか。
これまでは、外国人観光客が辿る観光ルートに沿っている街や地域でのインバウンド対策が重視されてきました。しかし最近では、流れていってしまう外国人客の足を積極的に止めるための工夫が求められています。空港と街を結ぶ高速バスの運行や、電車の割引運賃サービスなど、インフラ整備も欠かせません。
今後もインバウンド客数は右肩上がりに増えていくと予想され、吉祥寺のように思わぬ恩恵を受ける周辺都市も増えていくと考えられます。いざというときに集客を失敗しないためにも、吉祥寺をロールモデルとして、今から出来るインバウンド対策を始めてみてはいかがでしょうか。