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不況に負けないビジネスを目指す企業・人必読!真の顧客満足度を追求するための参考書

2016.09.23

書籍名
稼働率89%、リピート率70% 顧客がキャンセル待ちするホテルで行われていること―スーパーホテルが目指す「一円あたりの顧客満足日本一」とは?Amazon
著者
峰 如之介
出版社
ダイヤモンド社
価格
1008円

「1泊4980円」という驚きの価格でビジネスホテル業界に登場したスーパーホテルは、デフレの申し子として急成長を遂げた。稼働率89%、リピート率70%という数字を支えるビジネスホテル流顧客満足の仕組みを解き明かす!

格安で宿泊することができ、それでいて顧客満足度が非常に高いという驚きの実績を叩き出したスーパーホテル。高級ブランドホテルとは異なる路線をあえて選ぶことで実現したスーパーホテルならではの「武器」について、本書は鋭く切り込んでいます。

本書では、ビジネスジャーナリストである著者・峰如之介(みね なおのすけ)氏が行った徹底取材と、緻密な視点からのビジネスモデルの分析により、スーパーホテルの人気の秘密に迫ります。

第三者だからこそ見極められる、ホテルビジネスの肝

筆者は以前に、スーパーホテルの創設者であり現会長である山本梁介氏の著書を読んだことがあります。そのときに感じたことは、スーパーホテルの経営理念に込められた山本氏の理想と情熱の熱さです。いかにしてビジネスホテル業界で生き残っていくかという、山本氏ならではの工夫についても非常に感心しました。

しかし一方で、創設者自身の著書ではどうしても自社に対する甘さが出ているのではないか、という気がしたのも事実です。スーパーホテルがどのようにして顧客満足度の高い格安ホテルという地位を築いてきたのか、客観的な視点からも見てみたい、と思ったのです。

その点において、本書はスーパーホテルの経営に全く関わりのない著者によって書かれているため、客観性は非常に高いといえます。またジャーナリズムの観点からスーパーホテルのあり方を捉えているため、よりビジネス的な視点からスーパーホテルの内情を垣間見ることができるのです。

本書は、同ホテルの魅力を前面に押し出して紹介する本ではありません。スーパーホテルがどのようにして今の企業風土を育て、埋もれていたニーズを掘り起こして成功したかという、ビジネスのロールモデルとして紹介するドキュメンタリーです。

「顧客第一主義」を掲げながら、思うように顧客満足度が上がらないという企業は、ホテル業界だけでなく全てのサービス業において少なくありません。

真の顧客満足度を追求するために、本書は非常に参考になる一冊だといえます。

不況に負けないビジネスを目指す企業・人に必読の一書

本書は非常にコンパクトなつくりで、文章量もさほど多くはありません。通勤時の読み物として、ある程度の時間があれば一日で読み終えることも十分可能なボリュームです。

しかし、内容は見た目のボリュームよりも非常に充実しています。

ここではその内容について、簡単に触れていきたいと思います。

まず、本書第1章に書かれているのは「スーパーホテルのこだわり」です。

「1泊4980円」という格安ぶりで知られる当ホテルには、安さだけでなく快適・快眠、ITを積極的に取り入れた経営方式、ロハスへの取り組みといったさまざまなこだわりがあります。どうしてそこにこだわるのか、どのようにしてこだわりを実現したのか、本書では鋭い切り口でスーパーホテルのこだわりの秘密を明らかにしていきます。

続く第2章では、「スーパーホテルの沿革」について書かれています。

創設者である山本氏の生い立ちや経営者としての挫折、バブル崩壊を経たからこそ築かれたスーパーホテルの経営理念など、山本氏の人となりを知る上で役立つ章となっています。第2章を読むことで、スーパーホテルの企業風土を知ることできます。

この他、人材育成の方法や業界で初めてお客様相談室を設置した経緯、徹底した顧客満足度の追求といった企業内部情報に関しても、本書は徹底した取材を元に明らかにしていきます。

 

現在、日本のホテル業界は大きな岐路に立たされているといえるでしょう。ビジネスホテルやシティホテルでは宿泊料金の値下げが相次ぎ、老舗と謳われたホテルや旅館の廃業が相次いでいます。

その一方で、都市部では外国人観光客の増加により宿泊料金の高止まりやホテル不足が深刻化しています。つまり、ホテル業界でも地域格差が進んでいるのです。

多くのホテルが生き残りをかけて創意工夫を求める中、スーパーホテルのやり方は一つのロールモデルとして参考になるかと思います。

ぜひ、本書をより多くの企業経営者やホテル産業従事者に読んで欲しいと思います。

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