ホテル業界における新しい動きとして見受けられるのが、従来のビジネスホテルに代わって登場した、BedとBreakfastのみを提供するB&B型、つまり宿泊に特化したホテルの新興です。
出張が盛んになると同時に栄えた「ビジネスホテル」
1960年代後半からビジネスによる出張の機会が増えると共に、宿泊料金が手頃なビジネスホテルの人気が高まってきました。全国各地で需要が伸びるのに比例して建設が活発になったのです。この頃のビジネスホテルは、旅館を改装しただけのものも多く、バス・トイレは共同(各階に数個用意)、客室は洋室タイプではあるものの非常に簡素な造りのものでした。
その後、バス・トイレ付でシングルタイプの部屋を多数備えたホテルが急増し、1974年には政府系金融の融資基準に「ビジネスホテルに対する融資基準」が加えられ、ビジネスホテル増が一気に加速していったのです。
80年代になると、ビジネスホテルチェーンは全国展開が本格的になり、東急インやサンルート、チサンといった今やどの都市でも見られるビジネスホテルチェーンが業界を牽引していきました。直営店のほかに、フランチャイズ方式を採用した展開も始まってきたのがこの時期で、異業種がホテル業界に参入してくることも見られるように。シティホテルと比べるとビジネスホテルは新規出店のコストが低いこともあり、地方都市のビジネス拠点を作ることと合わせてビジネスホテルマーケットは次第に拡大を遂げたのです。
バブルの崩壊は、ビジネスホテル業界にも大打撃
地方都市の中には、地元で大きな影響力を持つ有力企業が、ステイタスとしてホテルを所有しているケースが見受けられます。ビジネスホテルとは名ばかりで実際は宴会の機能や婚礼、ショッピングゾーンの併設といったシティホテル寄りの無理な運営がなされるケースもありました。なんでも一番であることにこだわるがあまり、その本質が定まらずにホテルの経営を行なった結果、業績が悪化するケースも残念ながら存在したのです。
バブルが崩壊すると、個人消費は低迷の一途を辿りました。業態的にビジネスホテルなのかシティホテルなのか曖昧なホテルでは、稼働率を上げるためだけの低価格戦争に歯止めが利かず、結局採算がとれなくなり業績が急速に悪化。結果倒産してしまったところも出てきたほどです。
既存ビジネスホテルの苦戦をよそに、宿泊特化型が台頭
これまでのビジネスホテルチェーンに代わって、徹底した宿泊特化型のチェーンがバブル崩壊後に多く展開するようになりました。ビジネスホテルよりも低価格が売りで、更に内装や設備面の充実を図ったものです。サービスそのものはビジネスホテルに引けをとらずに、インターネット環境といった近年のビジネスマンのニーズにも応えています。単機能ながら的を射たサービスが、ビジネスマンはもちろん観光利用やファミリー層にも好評を博しているのです。
参考:『スーパーホテル』
http://www.superhotel.co.jp/s_hotels/facility.html
ビジネスホテル的なWi-Fiや会議室といった設備を有しながらも、健康朝食と銘打ってビジネス以外の利用者にも嬉しい朝食サービスも。温泉設備も備えている店舗が多く、枕を選べるといったようにビジネスユースに限らず利用層の幅を拡大した上で、宿泊に特化している新形態の代表格といえるホテルチェーンです。