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ビジネスホテル経営の入門書として最適!著者のチャレンジ精神から勇気ももらえる一冊

2016.04.01

書籍名
なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのかAmazon
著者
村山 慶輔
出版社
祥伝社
価格
864円

この45年間で客室数が33倍に急拡大したホテル業界。成長を支えたのは、日本で生まれて独自の発展を遂(と)げたビジネスホテルでした。 なぜビジネスホテルは、拡大しつづけるのでしょうか。 宿泊料金の定価という負のスパイラルに打ち勝つべく、各社はサービスを競い合い、ライバルとの差別化を図りました。 本書ではその実態に迫り、ビジネスホテルがなぜ「おいしい商売」な のかを明らかにしていきます。 あわせて、ホテル業界の内幕に詳しい立場から、日本のホテルの現状を分析。「また来たい」と思わせるための秘められた企業努力を紹介しています。

日本を訪れる外国人観光客数が1900万人を突破し、日本のインバウンド市場は活況を呈しています。
そんな中で、都市部におけるホテル不足の深刻化に注目が集まっています。東京や大阪ではホテルの客室稼働率は80%以上にまでおよび、宿泊業以外からのホテル経営への参入も相次いでいるほどです。

今、最もホットな業界の一つであるといえる、日本の宿泊業界。中でも熾烈な生き残り競争が始まっているビジネスホテルについて詳しく切り込んでいるのが本書です。

ビジネスホテル経営の入門書として最適な一冊

本書の著者である牧野知弘氏は、三井不動産のビルディング部門に所属し、多くのオフィスビルの買収や開発、証券化に携わってきた実績の持ち主です。
2002年の春、著者が人事異動によって出向を命じられた先は、子会社である三井不動産ホテルマネジメント社でした。

当時、相当な改革を必要とみられていた状況にあったホテル部門は、著者にとっては「左遷」とも感じられる出向先だった、と本書中で述べられています。しかし、著者は次第にホテルの仕事の魅力に引きずり込まれていったのだそうです。

本書は、そんな著者が自信の体験をもとに紹介する「ホテル業界の面白さ・旨み」のガイドブックであると同時に、現場に立ったからこそわかる「改革に必要なスキル」の指南書でもあります。

本書の特徴は、「ホテルとは何か」といった基本的な導入部分が充実している点にあります。
第一章では『現代日本の宿泊事情』と銘打って、減少傾向にある旅館と急増しているホテルの現況について紹介しています。また、「ホテルと旅館の違い」「ビジネスホテルとシティホテルの違い」といった点についても丁寧に解説されています。

本書を通して見えてくるのは、ホテルとそこに泊まる利用者の関係性だけでなく、宿泊業界を取り巻く「今」を踏まえてホテルビジネスに向き合おうとする、著者ならではの多角的な視点です。

「一見不可能そうなこと」をやり遂げる勇気をくれる一冊

著者は、三井ガーデンホテルに出向していたとき、「ホテルの設備管理費コスト30%カット」という一見無茶苦茶と思われる命令を受けます。あまり知見のない分野での難題であったにも関わらず、著者はこれを見事に達成してみせます。担当役員に「本当にやってくれるとは思わなかった」とまで言わせたこの経費削減術については、本書の第4章で丁寧に解説されています。

読後、大きなインパクトとして残るのは、「不可能そうに見えても、とりあえずやってみる」という著者のチャレンジ精神です。

ホテル業界に限らず、上司からの無茶な命令や役員上層部からの難易度の高い要求は、ビジネスマンにとって日常茶飯事です。主婦やアルバイト、学生に立場を変えてみても、似たようなシーンは想定できます。

そんなとき、本書に書かれている目標達成のための努力の仕方は、多くの読者の役に立つはずです。
例えば、ホテルの設備管理に関する専門知識のなかった著者は、系列ホテルと設備管理コストをリスト化し、現況を目に見える形で捉えたことで解決すべき問題を可視化したのです。

無理に思える難題にも前向きに取り組むという著者の姿勢は、ホテルの経費削減というシーンだけでなく、ビジネスシーンにおいても参考にしたいものです。

これを読めば、ホテル通になれる!

本書には、ホテルについての基礎知識から経営面での実践的なノウハウまで幅広い情報が詰め込まれています。宿泊業に携わる人以外でも、ホテルをよく利用するという人や、ホテルが好きという人にとっては、読み物としても十分楽しめる一冊です。

著者が見てきた「困ったお客様」や、涙ぐましい経費削減ストーリーなどは、まさに小説よりも奇なる面白みがあります。「普段なにげなく利用しているホテルに、こんな秘密があったなんて・・・」と驚くこと間違いなしです。

また、本書を読むことで、ホテル選びのポイントやよりメリットの多い宿泊予約の取り方がわかります。
宿泊施設を経営している人に役立つことはもちろんですが、出張などでホテル利用機会の多いビジネスマンにも読み物として強くお薦めしたい一冊となっています。

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