コラム

【時代の流れを知る!】ホテル需要と経営を取り巻く環境の変化

2015.11.01

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景気が回復してきていると言われてはいるものの、2009年のリーマンショック以来縮小の一途を辿ってきた宿泊市場。景気動向や社会情勢の変化によって影響を受けやすい産業のひとつです。

それに加えて東日本大震災での甚大な被害と原発事故による風評被害など、外資系ホテルで休業をやむなくされたところもありました。今後のホテル需要と、日本を取り巻く環境の変化からホテル経営はどうあるべきか、考えていきましょう。



外国からの観光客増加は大きなビジネスチャンス

日本国内のホテル需要が落ち込む一方で、ビジネスチャンスをしてとらえるべき動向といえば“訪日外国人旅行者”でしょう。2011年度後半から観光庁の主導で進められたビジット・ジャパン事業により中国や香港からの旅行者が増加に転じています。様々な政治問題を抱えてはいるものの、中国の富裕層の人々が日本に積極的に足を運んでくれるのは大変ありがたいことです。

訪れてくれた際には宿泊する施設が必要ですから、ここを大きなビジネスチャンスをとらえて中国人旅行者をターゲットとしたホテルを設定することは賢い選択といえます。

需要に対する宿泊産業の変化

平成25年(2013年) の訪日外国人旅行者数は1036.4万人(※)となっています。ビジット・ジャパンキャンペーンを開始した2003年では521万人だったことを考えると、その規模はこの12年で2倍にも膨らんでいます。

(※)出典:訪日外国人旅行者統計(日本政府観光局(JNTO)ホームページ

旅館営業法に定められる形態の施設の軒数は伸びずむしろ減少傾向にあり、国際観光整備法に基づく登録ホテルの軒数が伸びてきていることからも、宿泊業界は旅館という形態よりもホテルへの業態変更が進んできているといえます。

※出典資料:国土交通省

以上のことから、団体客を積極的に顧客としながらも、個人の旅行者にも対応できる従来の業態区分から離れた革新的なホテルが求められていくと考えられます。

プチ高級志向が進む日本。リゾートクラブの人気拡大も

日常生活では切り詰めつつも、ちょっとしたお祝いごとやご褒美に出資を厭わないというプチ高級志向が騒がれる今日。宿泊施設の中でもリゾートクラブといわれる会員制リゾートホテルや貸別荘といったものはバブル期に代表されたものです。旅館が減少の一途を辿っている反面、ホテルとこのリゾートクラブの需要は小幅ながら増加してきています。

出典:資料:「レジャー白書」(財)日本生産性本部

東日本大震災後は特に“家族の絆”、“思い出重視”といった価値観が広く浸透したことから、リゾートクラブで特別な時間を過ごしたいという人が増えてきているのです。ホテル経営をしていくうえで、こういった社会全体の価値観の変化や需要にしっかりと対応していくことが大切といえます。

注目すべきは“外国人向け”と“高級志向”のホテルとして対応できるかどうか

ホテル業界の決して甘くはない現状を考えたときに、プラス方向へ業績を伸ばしていくには新たなニーズに対応するか、今あるサービスに磨きをかけるかといったところで悩むでしょう。旅館業態で今後も手広く行っていくことに陰りが見えた今、ホテル業態をとって客のニーズにいかに応えていけるかについて考えていかなければなりません。

次回からはホテル業界の全体像を示すとともに、ホテルのサービスマインドや経営の仕組みといった部分について具体的にお話ししていきます。