ホテル経営をするにあたっての基本理念といえば、「ホスピタリティマインド」。おもてなしの心、親切丁寧な対応と訳されるこの言葉には、お客様に提供するサービスひとつひとつの質を高めるための考え方という意味合いがあります。
従業員のサービス能力を向上させることが集客に繋がるということを念頭に置いて、質を高めるにはどういった部分をケアし、どの部分をホテルのウリにしていくかを決めることが肝心です。
ホテルマン、ホテルウーマンの基本的なマナーとは
ホテルマンやホテルウーマンのマナーは、ホテルの印象を決める大変重要なポイントです。ホスピタリティマインドを持って、日々の業務にあたってもらわないといけないわけですが、抽象的な表現では意識に差異が生じます。
お客様に良い印象を与えるために、具体的にどういった点に着目して気を配るべきなのでしょうか。
- 身だしなみ
制服をきちんと着用しているか、制服は清潔な状態が保たれているか。髪の毛の色は華美すぎないか、男女共に清潔感ある形にセットされているか。爪を綺麗に手入れしてあるか等対面でのやり取りの際に距離が近づくこともあり、細かな部分までしっかりとしておくことが要求されます。 - 動作
荷物を持つ時など、気が行き届いてきびきび動けているか。お客様の足取りに気を配りながら誘導できているか。チェックイン・アウト時の手際は良いか。ドアの開閉に際して失礼が無いか等。動作の違和感はお客様が抱く印象に大きく影響します。 - 言葉遣い
基本の事項説明の際に間違った丁寧語を使用していないか。イレギュラーな事態があったときの対処時に言葉遣いが乱れないか。事実と異なる説明や見解を話してしまっていないか等人格が特に出てしまいやすい言葉は、一度言ってしまうと取り返しのつかない事態にも発展するので細部まで指導と教育が必要です。 - 表情
相手の目を見て、にこやかな表情をとることが出来るか。相手の心情を察して、気持ちに寄り添った表情をすることが出来るか等。表情ひとつで場の雰囲気が変わります。いかに魅力的な表情が出来るかによって、サービスの質が変わってくるので表情を作ることに対してもプロ意識を持たせることが重要。
機械的・事務的なサービスを脱却せよ
ホテルというのは、日常の中の非日常空間であると同時に衣食住のサービスに係るプロフェッショナルが常駐している施設です。常にサービスの向上を目指し、サービス要員の確保を行なっていきその上で収益を安定的にあげなければならない大変厳しい業界です。機械的・事務的なサービスではお客様に満足を提供することは出来ません。
媚びへつらうわけでは無く、根本にしっかりとした意識の元、お客様それぞれのニーズに応えられるサービスを提供することが求められます。
“企業理念”と“行動指針”であるべき形を目指す
日本を代表する企業である帝国ホテルは、企業理念と行動指針、そしてそれを構成する基本のホテル十則というものがあり、この業界で昔から大変注目されています。
理に適っているこの規則は経営(運営)規模が巨大であり広大なものということを理解したうえで、サービスの対価としての収入から成り立っている企業であるということを念頭に置いて作られています。常にサービスの向上を目指し、個々の要求に応えるべく円滑な業務遂行のためそれぞれの機能に従事するホテルマン・ホテルウーマンの有るべき意識をこの十則に明確に記しているのです。
- 親切、丁寧、迅速
この三者は古くて新しい私共のモットーであります。 - 協同
各従業員は所属係の一員であると同時にホテル全体の一員であります。和衷、協同もって完全なるサービスに専念してください。 - 礼儀
礼儀は心の現われ、ホテルの品位です。お客様にはもとより、お互い礼儀正しくしてください。 - 保健
各自衛生を守り健康増進に努めてください。 - 清潔
ホテルの生命であります。館内は勿論、自己身辺の清浄に心がけてください。 - 節約
一枚の紙といえども粗略にしてはなりません。私用に供することは絶対に禁じてください。 - 研究
各自受持の仕事は勿論、お客様の趣味、嗜好まで研究してください。 - 記憶
お客様のお顔とお名前を努めて速やかに覚えてください。 - 敬愼
お客様の面前でひそひそ話や、くすくす笑いをしたり、身装を凝視することは慎んでください。 - 感謝
いつも「ありがとうございます」という感謝の言葉を忘れないでください。
参考資料:帝国ホテル【企業理念と行動指針】