高度経済成長期のホテル建設ラッシュから40年以上が経過し、国内ホテル市場は大きな転換期を迎えています。外資系ホテルに対抗すべく大規模に改修するホテルや、新しい事業と組み合わせて勝負にでるホテルもあり、様々なビジネスへと展開している現状を知っておきましょう。
大手高級シティホテルが多く開業した2000年代
2000年以降、日本の都市部では外資系ホテルの進出が多く見られましたが、国内大手の高級シティホテルも建設ラッシュを迎えました。
新御三家と呼ばれる外資系ホテルが登場した1990年代前半は、都心からやや離れた立地であったことから、その影響力を危惧する国内ホテルは思ったよりも少なかったようです。一方の2000年以降の再開発にはホテル業界が積極的に参画し、丸の内、日比谷、日本橋といった旧御三家が建つ都心部にホテルが集中。客室数も多く既存のホテルは対抗策を練り出すことが急務でかつ必須となりました。それによって、高級化やはたまた施設の簡略化を計ったり、大きな目玉となるものを作るために大規模なリノベーションを選択するホテルが多くなってきているのです。
旧御三家の対応も様々
日本のホテルブランドを牽引してきた旧御三家もまた、大規模な改修を重ねて最先端の設備を誇る外資系ホテルに対抗しようと必死です。御三家の中で一番開業が遅いホテルニューオータニでも、50年を超える歴史を誇っています。単純に考えて一軒家やマンションであれば相当な年季の入り様ですよね。このため御三家は何度かリニューアルを行なってきています。今までの手狭感が否めなかった客室を広くし、ジムを併設したり、エステサロンを導入するといったように各ホテル共に様々なリニューアルを計画し、その中ですでに実行されているものもあるのです。
ホテルオークラの大改修では、ネットを活用し知名度アップ
ホテルオークラの大規模改修の話は、つい最近大きな話題となりました。ニュースで大きく取り上げられたのが、国内インターネット大手Yahoo! Japanの運営するヤフオク!を利用してのオークラブランドのチェアや宝飾品のチャリティー販売です。クローズした本館で利用していた物品のオークションが行なわれました。これによって、年季の入ったものでもプレミア価値を付け、オークラブランドを不動のものにすることが出来たのです。
インターネットオークションを利用しての販売方式だったというのも、現代のネット社会の理に適っているといえます。今までではオークラに興味の無かった世代でも、このニュースを見てオークションに参加し落札…という風に幅広い年代にオークラブランドを擦りこむ良い機会を作り出したのです。不用品に価値を付け収益を上げると共に、ブランド力を不動のものにする…まさにマーケティング戦略の賜物といえるでしょう。
参考:『ホテルオークラ』2015年秋からの4年間の建て替え期間後に、新しい本館をオープン予定。
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/toward2019/
料飲部門の拡充、機能の充実を選ぶ施設も
リノベーションを行なうのは客室だけではなく、料飲部門にもいえることです。料飲、宴会部門での売り上げを今後一層伸ばしていくことによって外資系ホテルの売り上げを越えようと考えているホテルも少なくありません。
ホテルそのものが数多く存在するようになった現代、淘汰されまいと既存の老舗もそうでないホテルも、必死になって対策を打っているのです。