急増する外国人観光客数に対して、都市部を中心に宿泊施設不足が深刻化している事態を受け、国土交通省はホテル容積率を緩和する方針を固めました。
これまでは、ホテルや旅館が立地する商業地では、建物の容積率は200~1300%と定められていましたが、具体的な数値については各自治体が独自に定めており、東京や大阪での中心部の一部地域では、大規模開発のため1300%を超えるケースも特例として認められていました。
規模の大きな宿泊施設ができれば、ホテル不足の解消にもつながる上、人数の大きいツアー客を積極的に誘致することもできます。
ホテルの容積率緩和は、インバウンド市場に追い風となると期待されているのです。
「明日の日本を支える観光ビジョン」策定
『観光先進国』への新たな国づくりに向けて、政府は3月30日、『明日の日本を支える観光ビジョン構想会議』において、新たな観光ビジョンを策定。
「明日の日本を支える観光ビジョン」として掲げられたのは、観光先進国への3つの視点と10の改革です。
宿泊施設の現状抱える問題については、視点の2つめ「観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に」内の「宿泊施設不足の早急な解消及び多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供」、また、視点の3つめ「すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に」の中の改革案「民間のまちづくり活動等による「観光・まち一体再生」の推進」で着目されました。
ホテルの容積率が緩和されるメリットとは
ホテルや旅館は建て替えや新築の際、容積率の制限を受けることになります。特に地方部では容積率の問題は大きく、建物の老朽化に伴う建て替えを検討しても、容積率が障害となって上手く進まないケースが少なくありません。
また、駅前で交通の便が良く人が集まりやすい立地にあるにも関わらず、古い小さなビルばかり立ち並んでいるところも多くあります。こういった地域は地区全体を建て替えようと思っても小規模開発となるため、従来の容積率では大きなホテルを建てられないといった問題もありました。
今回の容積率の緩和では、小規模開発でも容積率を緩和できるよう規制が見直される予定となっています。
小さな建物の並ぶ駅前地区を大きく開発して地域興しにつなげたり、複数のビルをまとめて大型ホテルに建て替えるといったことも可能になるかもしれないのです。都市部については、さらに大型ホテルが登場することが可能に。
2020年に控えている東京オリンピックに向け、今後も訪日観光客数は大幅に増加していくと考えられています。また、国内での移動も活発になり、日本人の宿泊利用者も増えていくと予想されているのです。
日本政府の予定では、老朽化したホテルや旅館が階数・客室数を増やして再オープンすることを求めています。また、せっかくの好立地を活かせずに放置したままのオーナーや行政にも、新築や建て替えを促しています。
<参考資料> 国土交通省
「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました!(トッピクス)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/topics01_000205.html
観光ビジョン実現プログラム 2016
http://www.mlit.go.jp/common/001131373.pdf